ベネチア映画祭の会場近くにHotel des Bains という、名作『ヴェニスに死す』の舞台にもなった歴史のあるホテルがありました。
永年、俳優や監督のインタビューの場所として使われ、私もベルトルッチ監督やジュード・ロー、ジョニー・ホリデイ、ビル・マーレー、スカーレット・ヨハンソン、などなど多くのスターたちのポートレートを撮りました。
でもこのホテルは今は新しい所有者に売り渡され、ウィークリーマンションになるんだなどの噂を聞いたりもしましたが、
数年経っても未だにまだ、このホテルは新しい場所としてオープンしていません。
75周年の今年、映画祭はここで75周年を記念した写真展を企画しました。
一番最初にベネチア映画祭が「展覧会」として開かれた1932年から、去年までの名作のパノラマが美しく飾られていました。
87年間の間で75回。この12年の差は、最初から毎年行われていたのではないこと、そして途中に戦争を挟んだことなどが理由にあって、
最初から必ずしも簡単に映画祭が続いてきたわけではない、ということを映画祭ディレクターのパオロ・バラッタが展覧会の説明で述べています。
そして、いろいろ紆余曲折を経て映画祭が映画祭として落ち着いてきた1946年になって初めてカンヌ映画祭が生まれ、
つまりはこのベネチアがまさに世界最古の唯一無二の映画祭であり、
皆にとって思い出深い場所であるこの旧「ホテル・デ・バン」に再び足を踏み入れることができることはどれだけの喜びか、ということを語っていました。
確かに、壁のペンキは剥がれ、中庭側はまだまだ工事中で、
往年の豪華で重厚なホテルの面影をほとんど留めていないことが切なく感じられますが、
美しい映画のスチールと、上映年を合わせながら振り返るのは
映画好きにとってはたまらないことです・・・!!
ブリジット・バルドー。
溝口健二がビエンナーレに来た時の写真。当時のベネチアに着物姿で来たんですね。
五所平之助の『大阪の宿』。
日本の作品も確かな存在を示していて、ベネチアで高く評価されていたことを計り知ることができます。
広いホテル・デ・バンの1F左側のスペースを全て使っての、大きな展覧会。
もちろん、近年には北野武監督、宮崎駿監督さんも登場しています。
この映画祭がいかに長い長い歴史を誇っているのかということ、
そしてそれがどれほど尊いことか、ということを感じます。
そして最後は去年の作品。
金獅子賞を手にしたのは、今回のコンペティション部門の審査員長を務めているギレルモ・デル・トロの『シェイプ・オヴ・ウォーター』でした。
この展覧会、ビエンナーレの開催期間中、つまり九月中ずっとやっているみたいです。
映画祭にいらしている方、これからベネチアにいらっしゃる方、
ぜひ寄ってみてください。
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昨日は、デビッド・クローネンバーグに功労賞が送られました。
こうしてまた一人、ベネチア映画祭の歴史に名を刻まれたわけです。
そして今週末発表される授賞式の結末はいかに・・・?
(若)